4. 道 詠 集
11歳のときのお歌
いにしえのかしこき人のあとぞかし ふみ見てゆかん経の道芝
いにしえのかしこき人の道ぞかし われはふみみてえものこすまじ
12歳のときのお歌
仏にも神にもなると聞くからは 吾は聖にならまほしけれ」
15歳の時
吾亦無他望 唯楽憲聖道 開看万巻書 天下亦無遺
21歳出家の日
たらちねよわが恩愛のつなときて 奇しき法海わたらせよかし
すてがたき家を出でてぞまなびなん このうえもなき高きみ法を
歓びの光にあはばとことはに のどけき春の心地こそすれ
ここをとぞさやかに今はみえねども 月のかたにぞあくがれにける
すすみゆく道の遠さもおぼほえじ 高峰の月の見まくほしさに
さやかなる月にこころもすみぬれば 光のほかに我なかりけり
月を見て月におもひのすむときは 月こそおのがこころなりけり
心して聞けば空吹く風さへも 甚深微妙の法のひびきぞ
永しへに照るみ光の中ながら 知らぬは己がやみにぞありける
あふぎみれば数かぎりなき星はみな 一のひとみの中に入るなり
みふところのなかともしらでねむり子は 生死の夢にうなされにけり
みほとけのさとき光に照らしみよ みな実相のすがたなりけり
いかばかり己がはからいわずらふも いたづらごとと今は知りける
我ばかり罪ふかき身はあらじとは 思ひながらもこりもせぬわれ
吹きすさむうき世の風はあらばあれ 我はミオヤのふところにすむ
迷いぬる雲にかくれて見えぬなり 鷲のみ山のありあけの月
すこやかな身のほどにこそもとめかし ときはににほう花の御国を
永遠の大我に活ける我なれば 我も尽きせぬ命なりけり
わがこころ底もきわみも無かりけり 十方三世に照りわたりてぞ
にせものの心身ばかりを我とおもい まことのわれを知る人もなし
奥ふかきこころにのみと思いしに 庭の花さえさとりひらきつ
座をしめて心を静かにおもいみよ 十方三世にわたる心を
とこしえの光のなかによみがえり きよきいのちとならまほしけれ