角 田 山 の う た 2007
2003 2004 2005 2006
1. 1月1日 晴れ,最高気温8度,宮前コースから
今年の元旦も昨年に続いておだやかに晴れて,絶好の登山日より。
昨年と違うのは雪がほとんどないこと。
観音堂まえからは白銀の飯豊連峰がくっきりと。余りの神々しさにしばし茫然。
2. 1月8日 曇り,最高気温6度,稲島コースから
昨日から冬の暴風雨で,今日は雨はないが風が激しい。午後になってやや落ち着いてきた。
それでも自転車が進まない。登山のほうがずっとらく。
いま,南天と山茶花の赤が美しい。花の淋しいこの季節にひときわ目立つ。
3. 1月14日 曇り,最高気温7度,稲島コースから
寒いとき浮かぶのはやはり,ロシアの作曲家たちの音楽とロシア民謡。
身を刺す寒風の中進むときは,勇ましいポーリュシカ・ポーレ。
歌詞はもっといいものが欲しいところだが,メロディーはすばらしい:
ポーリュシカ・ポーレ ポリュシカ涯しない 野を行くひづめの音 おおたくましつわもの
娘たちは 別れを惜しむよ いとしい人は今行く おお戦い目指して
娘たちよ見よ嘆き捨てて はるかに開ける道 おお明るく輝く
われは行く ひらけゆくコルホーズ 娘よ若きコルホーズ おお新しい力
空のかなた ただよう黒雲 森の影に広がる おお黒き敵の影
おお娘よ われらは戦う 駒はいななき進む おお敵陣めがけて
空に海に われら進み行く 戦う若者たち おお見守るヴォロシーロフ
いざコルホーズ 祖国守れよ 働く人を守る おおわれらはつわもの
娘たちよ 涙をぬぐいて 歌ごえわきたたせよ おおたたかいの歌を
ポーリュシカ・ポーレ ポリュシカ涯しない 野を行くひづめの音 おおたくましつわもの
4. 1月21日 晴れ,最高気温10度,宮前コースから
向こうの小山は湯の腰登山コース,その向こうには佐潟,さらにその向こうは新潟市街
暖かい,3月中旬の気候だとか。先日はニューヨークで22度になったとか。明らかに地球
温暖化の影響だ。みんなもっと真剣にこの事態にとりくまないと本当に大変なことになる。
人間の欲望のままに暴走すると地球の滅亡につながる。数十年前はアメリカ・ソ連の核戦争
での滅亡の危機であったが。キューバ危機のときは戦争直前まで行っていた。
今度は環境破壊での危機である。
頂上で昼食後横になっていたら,隣の場所で昼食のグループから
”彼はいろいろ批判意見を言うんだが,いつも自分じゃ何にもしないで困るんだよな・・・”
と,どこにもある話が聞こえてきた。
だが,山にまでこんな話持ち込まなくても。せめて山では娑婆のことは忘れたい。
5. 1月28日 曇り,最高気温8度,宮前コースから
6. 2月4日 雪,最高気温4度,稲島コースから
新潟市は104年ぶりに1月は積雪なしだったとか。
この冬やっと雪になった。暖かくて助かっているが,やはり雪がないとすこし
もの足りない。雪は精神を高揚させる。ときどき,牡丹雪が舞う。山も雪で見えなくなる。
こんな日に登山とは数少ない変わり者と思いきや,多くの変わり者がいた。駐車もほぼ満杯。
稲島への途中白鳥たちが田んぼに群れていた。自転車を降りて撮影しようとしたら
こちらをうかがって警戒している。すこし近づこうとしたら,早速逃げの姿勢になっている。
しかたなしに望遠にして撮影。魚もドジョウもいないと思われる,のこった籾殻でも食べている
のだろうか?
稲島コースのお地蔵様のそばの温度計ではちょうど0度。
7. 2月11日 曇り,最高気温5度,稲島コースから
ときどき水分の多い雪が舞う,あまり寒くない。わたしの上に降る雪は・・・
生い立ちの歌 (中原中也)から。
I
幼年時 私の上に降る雪は 真綿のやうでありました
少年時 私の上に降る雪は 霙のやうでありました
17−19 私の上に降る雪は 霰のやうに散りました
20−22 私の上に降る雪は 雹であるかと思われた
23 私の上に降る雪は ひどい吹雪と見えました
24 私の上に降る雪は いとしめやかになりました……
II
私の上に降る雪は 花びらのやうに降つてきます 薪の燃える音もして 凍るみ空の黝む頃
私の上に降る雪は いとなびよかになつかしく 手を差し伸べて降りました
私の上に降る雪は 暑い額に落ちくもる 涙のやうでありました
私の上に降る雪に いとねんごろに感謝して 神様に 長生きしたいと祈りました
私の上に降る雪は いと貞節でありました
8. 2月18日 曇り,最高気温8度,宮前コースから
枯れ草の中もう雪割草が咲き始めた。きれいなものではないが,可憐であるのに一方
たくましさを感じさせる花である。
9. 2月24日 曇り,最高気温5度,宮前コースから
久しぶりに寒い,日射しはつよくなったがときどき小雪が舞う。
宮前登山コースだと,途中ときどき日本海や越後平野を見渡せる。日常いかに狭い世界にとじ
こめられているかがわかる。 視野ばかりでなく,思考の上でも! それに少ないとはいえ生の
息吹を感じられる木々。芽もだいぶふくらんだ。山はいい,不思議なエネルギーを与えてくれる。
頂上では風と低温で寒さに耐えられず山小屋「健養亭」に入り休む。中は暖かいがたばこを吸
う人もいて空気が悪い。しかし寒さには勝てない。
10. 3月4日 曇り,最高気温13度,福井コースから
雪のうちに春はきにけりうぐいすの氷れる泪いまやとくらむ
二条后(古今集)
暖かい。とうとう冬らしい冬の景色をみないで春を迎えてしまったようだ。
登山口から少し行ったところに今雪割草が沢山あり最盛期だ。白,ピンク,紫の愛らしいちい
さな花を咲かせている。カタクリも芽生え蕾をつけているものもある。
11. 3月10日 曇り,最高気温11度,宮前コースから
まったく将来は予測できない。1週間前はてっきり春の到来と思っていた。
今週は冬型の気圧配置になり雪になった。日曜日はさらに天候が荒れそうなので土曜日に
登山。途中雪割草の群生している場所はすっかり雪に覆われていてなにも見えなかった。
しかし雪の中の登山もまたいい。張りつめた空気,厳しい自然,そして春への希望・・・
12. 3月18日 曇り,最高気温5度,宮前コースから
宮前コースにあれほど沢山の雪割草があるとは今まで気づかなかった。5合目くらいまでの
間注意してみると道の両側に実に沢山ある。5合目あたりにはもうカタクリの花が咲いていた。
13. 4月1日 曇り,最高気温16度,宮前コースから
天にも地にもよろこびの 光はあまねくみちみてり
心の花のひらくれば とはにのどけき春ならめ 弁栄聖者
黄砂で空がかすむ。山がかすむ。いま宮前コースはあちこち雪割草とカタクリの花で夢のよ
うに美しい。途中の道は両側がカタクリの花が続きしばし茫然。頂上は人人人。
14. 4月8日 曇り,最高気温16度,宮前コースから
宮前登山道の両側,山の斜面にかけてカタクリの花がいっぱい。残念ながら写真でその感動を十分
つたえることができない。
以下「新潟日報2007年4月9日」から:
新潟市西蒲区の角田山でカタクリの花が見ごろを迎えている。9日は、登山客らが道の両脇をいっ
ぱいに埋め尽くした薄紫色の花を楽しんでいた。 カタクリの花は下を向いて咲く様子が傾いたカゴ
のように見えることから、別名カタカゴとも呼ばれる。日当たりのいい小高い丘などに群生するのが
特徴で、雪解けを待って一斉に開花する。西蒲区役所産業観光課によると、今年は暖冬の影響で
1週間ほど早く咲き始めたという。角田山の登山道はカタクリの群生地として知られる。毎年この時
期になると薄紫色に彩られた道を歩こうと、県内外の登山客で活気づくという。カメラを手に毎週角
田山に訪れるという新潟市の60代女性は「カタクリの花が出迎えてくれているようで気持ちいい。
思わずシャッターを切りたくなりますね」と笑みを浮かべていた。
新潟日報2007年4月9日
15. 4月15日 曇り,最高気温14度,稲島コースから
桜と菜の花を求めて,仁箇堤に行き,登山後に上堰潟へまわる。
この世には忘れぬ春のおもかげよ朧月夜の花の光に 式子内親王
16. 4月21日 曇り,最高気温16度,登り灯台コース下り桜尾根コース
久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ 紀友則
花は散りてその色となくながむればむなしき空の春雨ぞふる 式子内親王
今週も桜を求めて,今度は角田山で。桜尾根コースの桜を訪ねる。久しぶりに国道402を角田に
向かう。いつもは松林の退屈な眺めだがこの時期はあちこちに山桜が咲いていて飽きさせない。
曇っているが,乾燥しているためか日本海の上に佐渡がはっきりと見渡せる。期待が大きすぎた
ためか桜尾根の桜はやや期待はずれ。近くで見るより,とおく霞んでいるように見る方がよさそう。
17. 4月29日 晴れ,最高気温19度,蛍の里福井コース
この時期イギリス音楽もいい,ディーリアスの「春初めてカッコウを聞いて」,エルガーの
「夢の子供たち」,ブリテン「夜明け」,ヴォーンウィリアムズ「揚げひばり」などなど
山は桜も終わりにちかく,コブシの花が満開。若い芽のエネルギーで満ちあふれている,
そのエネルギーをいただく。
18. 5月5日 晴れ,最高気温23度,宮前コースから
花に暮れて我が家遠き野道かな 蕪村
角田山への道,自転車をこいでいてもさまざまな花が咲いていて飽きない。今盛りは
八重桜,チューリップである。山の緑も百種類くらい違いがあると思われるほど沢山
の色である。萌黄から深緑までしかも同じとみえて微妙に違う。頂上経由観音堂前
広場まで。
19. 5月12日 曇り,最高気温17度,宮前コースから
あざやかなみどりよ、あかるいみどりよ、 鳥居をつつみわら屋をかくし、
かおるかおる 若葉がかおる
さわやかなみどりよ、ゆたかなみどりよ 田はたをうづめ、野山をおおい、
そよぐ、そよぐ 若葉がそよぐ
童謡,唱歌のよさがわかりはじめたのは外国を訪れ外国の風土文化を知るようになってからだ。
この日本的情緒のよさは日本にうまれ育ってよかったとつくづく思う。それと古くからある
和歌や俳句これも外国人には決してわからないとおもう。。。。もっとも我々にはイタリアオペラ
の良さがイタリア人のようには分からないのだとおもう。
20. 5月20日 雨,最高気温14度,稲島コースから
ときどき低くたれ込めた雲がやってきてパラパラと小粒の雨をふらす。
寒気団の通過らしい。角田山の頂上は雲にかくれて見えない。途中佐潟湖畔の
ハーブ園に寄る。まだラベンダーも咲き始めたばかり,管理人の方が手入れをしていた。
越後平野は田植えも終わりまだ稲もわからず水ばかり。山から見下ろすと,まるで洪水
になったようだ。頂上は風と雨でしばらくすると寒さに耐えられなくなりしばらく休憩して下山。
27. 5月27日 曇り,最高気温17度,宮前コースから
五月が特急列車のように過ぎ去ってゆく。まどからの見える花は桜はもう緑の葉が茂り
もうハナミズキやエゴの花に変わっているように。宮前コースもみどり深い道に変わっている。
去りゆく五月
我は見る,汝のうしろかげを。 地をはえるちいひさき虫のひかり
うち群るる蜜蜂のものうき唄 その光 その唄の黄金色なし
日に咽び夢みるなか・・・ ああ,そが中に,去りゆく
うつくしき五月よ。
三木露風
28. 6月3日 晴れ,最高気温23度,浦浜コースから
登山口はかつての小学校の跡地にある。今は廃校になってしまって,石碑が往時をしの
ばせる。昔は村にも子供も沢山いてにぎやかだったのだろう。入り口からしばらく階段が続くが,
その後は緩やかな登りである。今,ブナの新緑がうつくしい。木漏れ日の中をウグイスの
鳴き声を聞きながら登る,このすばらしく得難い時間。
28. 6月10日 晴れ,最高気温24度,稲島コースから
山までの途中佐潟湖畔のハーブ園に寄る。
入梅控え、ラベンダー鮮やか
新潟市西区赤塚の佐潟近くにあるハーブ園「ハーブランドシーズン」では11日、見ごろを迎えたフレ
ンチラベンダーが、鮮やかな色と香りで訪れた人を楽しませていた。同園では約6600平方メートルの
敷地に100種類以上のハーブを栽培。この時期はラベンダーのほか、カモミールなども花を咲かせて
いる。 新潟日報2007年6月11日 より
稲島コースから途中虚空蔵菩薩のあるコースへ入る。この時期バイカウツギの純白の花が
新緑の中美しい
29. 6月17日 晴れ,最高気温25度,蛍の里福井コース
62歳から登山を始め,2000山を踏破,「日本三百名山」登頂を果たした,田中三郎さんの
言葉:
”たいていの人は山頂からの眺めを目的にのぼるけど,私は途中の山の気配が好きなんで
す,だから低山でも十分楽しい”
いま福井コースを歩くと道には白い小さな花が沢山落ちている,すぐ上を見上げるとまだ
新緑の中エゴの花が咲いている。頂上は少しおそく今を盛りに咲いている。バイカウツギと
間違えそうだが,よくみるとかなり違う。バイカウツギは花弁が4枚,エゴは5枚,花の大き
さと形も随分違う。2つとも大好きな花だ,特に山の中で咲いているやつは。
30. 6月24日 晴れ,最高気温25度,宮前コース
芽吹いたばかりの苗木にも,樹齢何千年の古木にも,人と同じように心があるんです。
木からはね,実に爽やかな気が流れ出してる。木の前に立つと,思わず深呼吸して,自然
に手を合わせようという気持ちになるでしょう。それは木に霊が宿っていて,木にも心が
あるからです。 山野忠彦氏(樹医)
31. 7月8日 晴れ,最高気温27度,蛍の里福井コース
うちしきてあしたの沙羅のよごれなし 長谷川素逝
沙羅の花の季節である。沙羅の花は桜よりはかない。咲いたとおもうと
2〜3日で散ってしまう。夏の朝その白い花が木の下に散らばっている。
32. 7月22日 晴れ,最高気温25度,宮前コース
道の辺の草深百合の花咲に咲みしがからに妻といふべしや 万葉集
ことしも山百合が咲き始めた,山深い緑の森の中に。ときどき玄関などに同じ花がある
が自然の中にあるものの美しさ,与える感動とは比較にならない。
33. 7月29日 曇り,最高気温25度,宮前コース
雷の季節。
遺りがたきかなしみ持たば聞きに来よ日向の国の大雷鳴を 伊藤一彦
向陽道林の階段のところで,カマキリがアブを食べている場面に出会った。人が近づいても
動かない,じっくり食べることに専念している。みほとけのまつられているお堂の前で。これが
自然界の厳しさ。また,やまみちには百合が今盛り,道のへりにはヒグラシが羽をばたつかせ
ていた。草を払うと一気に飛び立っていった。命もえる夏。生あふれる山。
34. 8月5日 晴れ,最高気温32度,灯台コース
暑い,暑い,それに日陰のない灯台コースの岩場。登山口の海水浴場の賑わい,
沖にはボートが白い水脈をつけて走り行く。湿度が高いためか佐渡は見えない。やがて
山の中に入り,アブラゼミとヒグラシの大合唱,こちらのコースでも山百合が満開。
頂上は人がすくなく,木陰では爽やかな涼風が吹き渡る。セミの鳴き声を聞きながら
しばらく午睡。
35. 8月14日 快晴,最高気温35度,宮前コース
お盆の日登る。ふるさとの幼なじみも何人か逝ってしまった。
どうそうの友の逝きたるたえきれず一人山に登る 久
深い森の中を歩むと木々が力を与えてくれる。なんだろうこの不思議な力は?
もうキツネのカミソリが咲き出した。ふもとではアブラゼミとつくつくほうし。
あしもとからヒグラシが飛び立つ。汗がしたたり落ちる,下着は汗をすいきれない
さすが今日登る人は少ない。
36. 8月19日 晴れ,最高気温31度,蛍の里福井コース
幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく
けふもまたこころの鉦をうち鳴らしうち鳴らしつつあくがれて行く
若山牧水
蛍の里福井コースの途中東屋から弥彦山やとおく国上山も見える。その昔晩年の
良寛の住んだ山だ。今年はヒグラシの鳴き声が少ない,年によって発生数が随分と
違う。暑い暑いといってもしのびよる秋の気配が。
37. 8月26日 晴,最高気温32度,宮前コース
今年はまだ暑い日が続く:
百日紅涼しきこかげつくりけり 高橋淡路女
ひぐらしや明るき方へ鳴きうつり 暁台
まざまざと在すがごとし魂祭 季吟
咲き送れの山百合かと思ったら,カサブランカである*。まさかこんな山深いところに
こんなにいっぱい咲くとは驚きの発見である。みな一方方向を向いていて,まるで口を
開けて何か訴えているようである。それとも精一杯咲いたわれわれを見てくれと言って
るのだろうか?人に栽培されたカサブランカとちがい痩せた山地なので花も幹も細く
たよりない。しかしどこか心の強さを秘めている。
帰り佐潟湖畔では赤塚祭りが行われていた。いろいろな屋台も出店していて舞台では
カラオケと司会者によるトークがあった。
(*似ているが実はカサブランカではないらしい)
38. 9月30日 曇り,最高気温21度,宮前コース
山への途中ことしも畑で園児と家族らがさつまいもほりをしていた。
1ヶ月ぶりの山。少し紅葉も始まり花も少なくなった。ツリフネ草もそろそろ終わり。
赤紫のものが圧倒的に多いが,その中にわずか黄色があった。急斜面なので
撮影はちょっと大変だった。
39. 10月6日 晴,最高気温23度,五倫石コース
キツリフネを求めて久しぶりに竹野町五倫石コースから登る。3合目あたり杉林の中にかわい
いのがあちこちに咲いていた。頂上を通り過ぎて観音堂前広場へ。刈り取りの終わった越後
平野と新潟市街がくっきりと見える。
これからだんだん寂しくなる・・・
心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ沢の秋の夕暮れ 西行
40. 10月14日 晴れ,最高気温20度,蛍の里福井コース
今年の紅葉は遅い,やっとナナカマド,ウルシや桜の紅葉が始まった。秋の弱光が寂光に通じ
爽やかに晴れたがはかない。
寂光,さびしい光のように思っていたら違うようです。
#寂光:安らかな光。寂は真理の寂静なることをいい,光は真智の光照らすことをいう。すなわ
ち理智の二徳をさしていう。寂光土など
41. 10月21日 雨
新潟の晩秋は弁当は忘れても傘は忘れるな
という諺がある。朝の天気予報でも昼頃から曇りとなっていた,10時すぎには晴れ間もみえた
少し気がかりだから一応折りたたみの傘をもって出かける。赤塚をすぎ巻に入ろうかというあたりで
急に土砂降りになる。自転車で折りたたみが役に立つはずがない。たまらず道路脇のあいた納屋の
軒先で雨宿り。しかしなかなか止まない,山も向こうの空も黒い雲が覆っている。引き返すにはなか
なか思い切れない,だがしかたない・・・というわけでこれで2回目の途中撤退。長い内にはこんなこ
ともある。
42. 10月28日 晴れ,最高気温21度,宮前コース
黄葉,紅葉,秋のやわらかな日射しの中,黄紅葉が映える
夏に花を咲かせたエゴの実が葉のなくなった木にぶらさがっている
生き物たちもそろそろ冬支度かと思いきやまだ鳥の鳴き声,コオロギの鳴き声,足下には
カマキリ足の長い蜘蛛たち。
かなしきは 秋風そかし 稀にのみ湧きし涙の繁に流るる
秋立つは水にかも似る 洗われて 思ひことごと新しくなる
愁い来て 丘にのぼれば 名も知らぬ鳥啄めり赤き茨の実
啄木
43. 11月4日 晴れ,最高気温18度,蛍の里福井コース
落ち葉を踏みしめ鳥の鳴き声を聞きながら秋の木漏れ日の中を歩む
とうとう虫たちの鳴き声はきこえなくなった。木々は最後の生を燃やしている。
頂上についたときは肌寒くゆっくりしていられない。法然上人のこころの内を歌われた歌を
ひとつ:
あみだ佛に染むる心の色に出でば,秋の梢のたぐひならまし 法然上人
44. 11月10日 雨,最高気温16度,宮前コース
今年はよく雨に見舞われる。出発してそうそうに雨。予報ではそれほど
悪くないとのこと。しかし遠くの空も暗い,引き返そうかと思いつつ予報を信じて
決行。登り始める頃には止む。晩秋雨の角田山とうとう誰にも遭わなかった。
頂上の山小屋で休む。小屋の中でも寒い,ストーブと薪があるが,肝心のマッチがない。
45. 11月17日 快晴,最高気温14度,湯の腰温泉コース
快晴でもあり予定を変更して急に上堰潟に寄る気になった。ちょうど黄葉真っ盛り
で,ここからの眺めはとても印象に残るものだった。ただひとつ人の手で作られたという
感じが強いのが残念である。湯の腰コースは久しぶり,想像のとおり黄葉がみごとであった。
途中下山のお年寄りの夫婦と遭う。
私:「黄葉がすごくみごとですね〜」
夫の方:「頂上なんか,先週はもっと良かったですよ。」
私:「そうですかー」
(先週はとても大変であった)
木漏れ日の黄葉の中落ち葉を踏みしめて一人あるくこのしみじみとしたなにごとにもかえがたい
時間。上に行くにしたがって,やはり裸の木が多くなって淋しくなってくる。ふと吉本ばななの
「キッチン」の一節をおもいだす:
「・・・いつか必ず,誰もが時の闇の中へちりぢりになって消えていってしまう。」
まったくその通り,人も木々も生きとし生けるものみな儚い時間のなかを歩んでいるのだ。
しばらくして今度は Bach のマタイ受難曲の終わりの方 Nr 72 のコラール
いつの日かわれ去り逝くとき
われをば離れ去りたもうな。
われ死に面するとき,
汝,立ち出てわが盾となりたまえ!
恐怖と不安の闇
わが心を囲み閉ざさんとするとき
われをこの恐れの闇より引き出したまえ!
汝の嘗めつくせし不安と責苦のゆえもて。
が静かにくりかえしくりかえし流れくる。
46. 11月25日 晴,最高気温16度,宮前コース
よはよはと日のゆきととく枯野哉 麦水
晩秋の日射しはよはい,3時になるともう陽は西に落ちそうである。帰りに海に寄ってみた。
47. 12月16日 曇り時々雪,最高気温5度,稲島コース
冬は稲島コースが安全。時々雪が舞う。松と竹の緑をバックに雪の舞う風景は印象的。
登っているとき汗で下着は濡れて,頂上に着いてはしばらくは暖かさも残っているが,風もあり
だんだん寒さがしみてくる。そこで山小屋に入ったが,中はたばこの煙が充満していて
すぐ気分が悪くなった。そく,退散・・・是非禁煙をお願いします。せっかくの大自然の中です,
山にいるときくらいはたばこは止められないものか。
48. 12月22日 曇り,最高気温6度,宮前コース
この時期毎年のことだが,チャイコフスキーの交響曲1番「冬の日の幻想」が1日中頭の中をか
けめぐっていた。ロシアの凍てついた冬の日,弱々しい日の光がさす。ロシア情緒たっぷりなのに,
日本人の私もすごく共感する。チャイコフスキーの交響曲というと後期の4,5,6番が有名である
が,この1番もそれに劣らずすばらしい。たしかに作曲技術ではまだ十分でないかも知れないが,
インスピレーションは後期を凌ぐほどであると思う。こんなに美しく曲想のすばらしい曲なのに余り
知られていないのは残念だ。クラシックの解説書にもほとんど採り上げられていない。
冬枯れの森では青木が元気だ。夏の間大きな木々に日光を遮られてひっそりとしていたのだが,
今や(晴れれば)日光をいっぱい浴びることが出来る。
外で昼食していたら寒さに耐えられず,山小屋に入る。近年マナーの悪い登山客が増えて
ストーブのヤカンを持ち去ったり,ゴミを小屋におきっぱなしにしたり,果ては募金箱の
お金をくすねるというのだ。なんとも情けない時勢になったものだ。